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2011年10月 2日 (日)

未来から来た科学者

映画監督の岩井俊二が松田美由紀を伴って小出裕章助教にインタビューした映像を「インタビュー作品」としてネット上で公開している。
http://iwaiff.com/201110/jp/friends/friends_after_311_movie_koide.html

小出氏は今さら私がここで語るまでもなく、反原発を長年訴え続けてきた反骨の原子力研究者として原発事故後に注目され、現在では推進派には厄介な、脱原発派にとっては最も信頼出来る人物の一人である。

私は友人から知らされ、参議院行政監視委員会での彼の発言を聞いて以来、その発言にも存在にも感銘を受けている一人だが、それについてはここでは触れない。

私が記しておきたいと思ったのは岩井俊二の映像に刻まれる彼の姿から得た印象についてである。

岩井俊二は私にとっては「love letter」「スワロウテイル」の岩井俊二であり、我らが蒼井優を女優として世に送り出した岩井俊二である。

過去・現在・未来を巧みな映像美で切り取りファンタジーを紡ぎだす天才映像作家は反骨の原子力研究者をどのように映し出すのか?私はそのことに興味があってこの「インタビュー作品」を見た。

カメラが京都大学原子炉実験所のゲートをくぐるところからこの作品は始まるが、その敷地内にある建物の一室で待つ小出助教はさながらSF映画やアニメで描かれる「伝説の科学者」「死んだはずだが実は生きていた博士」といった雰囲気を醸し出している。

だがこの後松田美由紀や岩井俊二のインタービューに丁寧に応える彼の言葉を聞くうちにその第一印象から得た感覚は大きくズレたものであると思い知った。それは彼の存在がSFチックなのではなく、すでに少し前まで(3.11以前)にSFだと我々が感じていた世界に不本意ながら我々はすでに突入してしまっているということに改めて気づかされたからだ。

「スワロウテイル」で近未来を切り取った映画作家は「未来からやってきた科学者」という最高の素材を得てその姿をリアルに捉えることに成功している。

単なるインタビュー映像に見えるこの作品は実は「過去の科学者」が「未来からやってきた科学者」に変わる瞬間を切り取った貴重な映像でもある。

小出氏の正体が「過去の科学者」ではなく「未来からやってきた科学者」であることが公になったのは不幸な現実故なのだが、そこを第1歩にしようとする岩井俊二の脱原発への取り組みには今後も注目していきたい。

途中、松田美由紀が小出助教を嗜める場面があるが、(それこそがこの作品の中で助教が変身するためのスイッチである。)彼女が伝えたことは今後の日本にとって本当に重要なことで、それをストレートに本人に伝える彼女もただ者ではないと感じた。(優作が惚れたわけだ、さすが!)

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