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2011年12月11日 (日)

ふくしまけんきらいや

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明治の粉ミルクから放射性セシウムが検出された。製造側からの説明では粉ミルクを乾燥させる過程で使用した空気に放射能が混ざっていたとのことで原乳が汚染されていたわけではないらしい。

ただ今回のことが明るみに出たのは二本松の市民測定室が検出したからであって、自治体や政府機関が検出していればおそらく「基準値以下」の判断でうやむやされただろう。
(市民測定室は明治に対して2回対応を求めたが取り合ってもらえず、やむなく共同通信にこの件を持ち込んだとのことだ。)

だから明治以外の粉ミルクだってその他の乳製品だってその「うやむや」が含まれていると考えた方がいいだろう。

責められるべきは原発であり、ミルク業者も被害者なのだから、ここで明治乳業を責めるのはやめよう。だが・・・・である。

目の前に「経済」と「消費者の健康」更に突き詰めて「人命」を秤にかける場面が現れたとき、「人命」ではなく、「まずは経済優先」って場面が今この国のあらゆる現場で起ってはいないか。起り過ぎではないのか。

我が福島県も早くから食の「安全宣言」を出したものの、その後米からの放射能物質の検出が相次ぎ、知事が「安全宣言」が拙速であったことを認めた。県の場合は県内の生産者を救おうとの気持ちがあるからこその失策だが、もう少し方法はなかったのか?(安全が確認されている食材に関しては福島県内だけで循環させるなど。そのために県民に一致団結を呼びかけるなど。)

他の企業はどうか?薬害エイズや薬害肝炎の教訓は活かされているのか?

私は父をB型肝炎、母をC型肝炎で亡くしている。いずれも長きにわたる闘病生活の果てに力尽きたが、二人をそばで見ながら何度その原因を作った者達を呪ったことだろう。母は「昭和初期の医療体制では仕方がない。誰も恨んではいないし、恨んではいけない。これは運命なんだよ。」と何度も私に言い聞かせた。そして最後の最後まで楽天的に生きた。私はその明るさのおかげで支えられていたのは自分の方だったと感じているが、母がそのように生きることができたのは病気の原因を作った者を特定できなかったことと、それ故の葛藤を乗り越えたことによる「達観」があったからだと思う。それでも母は朝晩、そして気持ちが落ち込んだときには何度も神に祈った。(信仰のおかげかもしれない。)

だが、もし今回の原発事故でそれが原因と思われる病に近親者が倒れたとき、(我が子が苦しむ姿を目の当たりにしたとき)私は両親の時のように彼らを見守ることができるだろうか?
 
自分がその種の病を患ったときはどうか?

私には自信がない。それは原因を作った者たちの姿がハッキリしているからである。それは東電と原子力マフィアの面々である。さらに突き詰めればそれを許してきた私たちの生活様式でもある。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

私が今回の粉ミルクの件を聞いて真っ先に思い出したのは、絵本作家長谷川集平さんのデビュー作「はせがわくんきらいや」である。

この絵本のあとがきには次のような言葉が寄せられている。(以下抜粋)
「昭和30年、森永乳業徳島工場で製造されたドライミルクに含まれていたヒ素によって西日本中心に2万人以上(推定)の乳児が身体に異常をきたし、125人(昭和32年当時)の赤ちゃんが死亡しました。そして現在も政府の認定患者、未確認患者、数多くの人が苦しみそして亡くなっています。」

このあとがきと同じことが今後日本のあちらこちらで起らない事を祈る。
(一昨日の朝日新聞で、30ベクレル程度でも内部被曝であればチェルノブイリでは脳卒中や心筋梗塞で亡くなる人が増えているとの記事を読み、不安は募るばかりだが…。)

私がこの絵本を愛おしく思うのは、ここで“はせがわくん”をささえる少年が母の発症初期の時の自分とだぶるからであり、この後、深い友情(愛情)が発生する場面を容易に想像することができるからである。

福島県は“はせがわくん”になれるだろうか?そして日本人はここで描かれる少年になれるだろうか?

みなが原発事故を過去のものとし、食料汚染をうやむやにし、無関心を装うことが日常なっていくとしたらそれは無理だ。なぜなら「愛の反対は憎しみではなく無関心」(マザー・テレサ)なのだから。

昨夜、テレビで福島県民に対する厳しいコメントを紹介する番組を見た。

今はそれでいい。

そのやりとりの果てに福島の復興があることを心から願う。


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