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2017年6月

2017年6月25日 (日)

鈴木酒造店長井蔵 一生幸福 金賞受賞 祝賀会

            

昨日行われた「鈴木酒造店長井蔵 一生幸福 金賞受賞 祝賀会」にご参加いただいた皆様、近隣のみならず遠方からも足をお運びいただきありがとうございました。

昨夜、何名かの方から「代表挨拶が素晴らしかったので後でFAXして欲しい」「何かの形にしておいてください」など拙文に対し、当方といたしましては嬉しいやら恥ずかしいやらのコメントを授かりました。

実はこの挨拶文を書こうとした時、私の頭の中から浮かび上がってきたのは先の世界戦で「まさかの判定負け」を喫したボクサー村田諒太選手のことです。

試合後のあるTV番組のインタビューで、彼はあのような判定負けをして憤りはないのかと問われると、「ない」と答え、驚くべきことに第二次世界大戦中、ドイツの強制収容所での体験を記したフランクルの名著「夜と霧」を引き合いに出し、「運命からの問いかけに応えるという生き方」について話し出したのです。

彼の話は自分の心境の的を得ていたのかとても印象に残りました。そして私が最初に思い浮かべたのが鈴木酒造店長井蔵のことだったのです。

「運命からの問いかけに応えるという生き方」とは「自分の運命を貫いて生きる」ということでしょう。

そんなモードで書いた主催者代表挨拶を自らの備忘録として掲載いたします。


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みなさん今晩は。只今紹介に与りました村田孝でございます。「鈴木酒造店長井蔵 一生幸福 金賞受賞祝賀会」を開催するにあたりまして、主催者を代表してご挨拶申し上げます。

鈴木酒造店長井蔵の皆様、平成28酒造年度全国新酒鑑評会での金賞受賞、誠におめでとうございます。

この度の受賞は鈴木酒造店長井蔵の皆様のみならず、ご親族を始め、全国各地に避難された浪江町の方々や福島の方々、今もなお再生を目指す被災各地、さらには常日頃、鈴木酒造店長井蔵と深く親交を結ぶ皆様にとりましても大変喜ばしいことであり、心よりお喜び申し上げます。

また、本日は何かとお忙しい中、本祝賀会に来賓といたしまして、長井市より、長井市長代理の遠藤健司(けんじ)副市長様、福島県からは浪江町長代理の本間茂行副町長様をはじめ、他、多くの方のご臨席を賜りましたこと、誠に感謝致しております。

さらに本日はこのように多くの方々にご出席いただきました。ご出席いただいた皆様に厚く御礼申し上げます。

さて、今回鈴木酒造店長井蔵は全国新酒鑑評会において金賞を受賞したわけでありますが、全国新酒鑑評会は全国規模で開催される唯一の清酒鑑評会でありまして、清酒の品質及び製造技術の向上と、国民の清酒に対する認識を高めることを目的として設けられているものであります。今回は出品数860点の中から242点が金賞酒に輝き、鈴木酒造店長井蔵が醸した「一生幸福」もこの中の1点として名前を連ねているということでございます。鈴木酒造店長井蔵の酒造りに対する真摯な取り組みと、技術の高さが全国的な場で認められたということは誠に喜ばしい限りであります。

しかしながら本日のこの祝賀会は、単にこの金賞受賞のみを祝うものではないということをあえてここで申し上げたいと思います。

少し話が脇道に逸れますが、鈴木酒造店を語るとき、東日本大震災と原発事故に触れないわけにはいきません。

本日の祝賀会の意味と意義をご確認していただくために、1つの意見を紹介させていただきます。それは震災があった年の8月に朝日新聞に掲載された「福島の意味 事故と向き合い生きる覚悟」と題された文章のなかにあったものです。

それは次のようなものです。

「できるかどうかをまず考えるのは確かに現実的に見える。しかし、3月11日以後もそれは現実的だろうか。
脱原発について、できるかどうかから検討するというのでは、まるで3月11日の事故が起きなかったかのようではないか。すると覚悟を決め、それが突きつける課題に挑む。福島の事故は、考え方をもそんな風に「一変」させるよう迫っている。」

私は、残念ながら日本人は現時点において未だにそれまでの考え方を一変させることができないでいると感じておりますが、私は本日ここで原発の話をしたいわけではありません。

鈴木酒造店は福島県浪江町で江戸時代から続く、伝統ある酒蔵を津波で流失し、原発事故の影響から故郷を奪われました。それでもなお、この地元長井の酒蔵であった東洋酒造を受け継ぎ、酒造りを再開されてからの再生への取り組みは、「すると覚悟を決め、それが突きつける課題に挑む日々の連続」だったであろうことは容易に想像できるのであります。

 そして、そのような日々を重ねながらも、避難移住先のこの長井の地で行政はもちろんのこと、レインボープランや影法師、長井市福祉協議会、長井グリーンツーリズムネットワーク、さらには地元農家や商工業者といった多岐にわたる方々との交流を図り、郷里福島浪江町や全国の酒販店、応援者の方々との絆を保ちながら活動してきたわけであります。

今日ここにお集まりの皆様と共にお祝いしたいのは、このようにして鈴木酒造店がこの地で長年親しまれた銘柄「一生幸福」で受賞した今回の「金」は、他の金賞酒とはまた別の輝きと香りをひときわ高く放っているということに対してであります。

また、全国新酒鑑評会での金賞受賞は長井の蔵元としては初めての事と聞き及んでおりまして、「一生幸福」と「甦る」の銘柄を鈴木酒造に託して亡くなられた東洋酒造の社長様もきっとお喜びになられていることと思います。

私も長井市民の一人として、皆様には鈴木酒造店にバトンを渡すまで蔵を守り続けた東洋酒造のご尽力に対しても盃をあげていただければ幸いです。

市民が守り続けた酒を、避難者として流れ着いた酒蔵が、受け入れ先の方々に見守られながらイノベーションを果たし、全国の場で賞を受賞するなど、どこにでもある話ではございません。

本日は長井市副市長様と浪江町副町長さまがこの場におられますので、是非今日のこの祝賀会をご縁にしていただきまして、町ぐるみの新たな交流、新たな復興の形に、繋げていただければこれ以上幸いなことはございません。

皆様、各テーブルの上に置かれた「一生幸福」をご覧ください。

「一生幸福」は、注ぐ時、酒瓶のお尻が持ち上がると福という文字が幸という文字よりも若干高くなって福島の幸せという当て字で「福幸(ふっこう)」となります。
注ぐたびに、「ふっこう、ふっこう」と囁きかけられ、おけば一生幸福を約束してくれるお酒です。

鈴木酒造店にしか引き継ぐことのできなかったお酒ではないでしょうか?

是非、今日はこの「一生幸福」を皆様の車座の中心に据え、心ゆくまで祝杯を重ねていただければと思います。

最後に私事で恐縮ではありますが、私もまた鈴木さんとは別な形の自主避難という形で福島県いわき市から長井市に移住をした者でございまして、震災後多くのメディアで鈴木酒造店の磐城壽が取り上げられる度に胸のすくような思いで報道に接しておりました。勇気を頂いておりました。

ですから避難者としての境遇をともにし、かつ元いわき市民であり、現在長井市民である私以外に本祝賀会を開催するものはいないという誠に勝手な思い込みから僭越ながら急な案内をお届けしたことをお許しください。

少々長くなりましたが、本日お集まりの皆様のご健勝と一生幸福を、また鈴木酒造店長井蔵、磐城壽の今後の益々のご発展とご活躍を心より祈念いたしまして代表挨拶とさせていただきます。

ありがとうございました。

                                                              2017.6.24

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